怪奇譚 子供時代編(超ライト)
皆さんは自転車にはじめて乗れた日のことを覚えていますか。
私は乗る必要性を感じなかったので、幼稚園の弟が先に乗れるようになっても静観していました。
そんな時、住んでいた古い社宅は壊すことになり、新しい社宅に移ることになったのです。
同じ市内なので小学校は越境でバス通いになりましたが、友達の住んでいる元居た学区に行くには小一時間かかります。
バスも少ないし。
自転車に乗る必要性が出てきました。
かといって、弟がすいすい乗っている今、親に「後ろ持ってて~絶対離さないでね~~。」などというレッスンはたのめません。
頼んでもいいのでしょうが、小さなプライドがそれを許さず、一人で練習するはめに。
坂道を利用して転げ落ちたりしながら、擦り傷だらけで毎日練習していました。
ある日、学校から帰りいつものように弟の自転車を拝借して坂道を転げ落ちていると、学ランをきた見知らぬお兄さんが、「ツーツーができるようにならないとね。」といいながら近づいてきました。
ツーツー??
自転車のペダルに片足(左側から乗るならば左足)を乗っけて、サドルにすぐ座らずに走ることらしいのですが。
すぐに座って漕ぎだしていた私には目からうろこです。
社宅の駐車場までついてきたお兄さんは、時々アドバイスしながら見守ってくれました。
ツー がたっ ツーツ がたっ なかなかうまくいきませんが、だんだん慣れてきました。
そっか明日からはツーツーの練習だな、こっそり弟の自転車を駐輪場に返して思った私です。
次の日、学校でそのことを言うと、友達はみんな
「えーーー、それ危ない人だったらどうするの。」
「そうだよ、人さらい(変質者という言葉は浸透していなかった)かもしれないよ。」
げ…そうか。
後ろが山で、畑が多い田舎です。
小さな私の死体を隠す場所はたくさんあります。
基本は教わったから、今日は練習するのやめよう…。
明日もくるからね、といっていたお兄さんですが、結局その姿はみえませんでした。
駐車場から道路をはさんで反対側に警察学校があったのですが、いつも教室から兄さんたちが手をふってきます。
こっちの方が気持ち悪いや(スマソ)…と思っていた私。
しかし、次の日も次の日もお兄さんの姿はありませんでした。
いつしか私はおかげさまで左からも右からも乗れるようになり、しまいには曲芸乗りまでできるように(やめなさい)
で、オチはって。
そうなの。お兄さんと二度とあうことはなかったの。
後日新聞にその顔写真を見た、とか、仲良しの友達の亡くなったお兄さんで写真が飾られているのを遊びに行った時に見た、実は何年も前に…とかね、そういうの期待されていたでしょう。
あのお兄さんはいったい…子供の頃の不思議な思い出って、そんなもんじゃないでしょうかね。
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